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woodCAD|CAM - インフィル・テクノロジー Vol.51 に紹介されました

岐阜県飛騨市の家具メーカー・ナウエ㈱を見学最新設備の生産ラインと人材育成を学ぶ

  • 5 軸のCNC加工機も導入
  • 組み立てられた出荷前の家具
  • 造作家具の生産工程
  • 特注家具も少人数で完成
  • 名上社長から説明を受ける東京建具協同組合の組合員
  • 工場の生産体制の概略説明

「ウッドCAD・CAM」は従来のCADソフトのようにパソコン上で線を引いて図面を作成するのではなく、家具の設定条件を入力するだけで3次元の図面が出来上がる。

    東京建具協同組合(岡村宣勝理事長)では11月2日、国内の家具工場の見学ツアーを実施。岐阜県飛騨市の家具メーカーであるナウエ㈱を訪問し、同社の生産ラインや製造工程などを学んだ。

    ナウエ㈱は昭和24年に現社長である名上泰幸氏の父親が個人で名上建具店として創業。戦後の復興期に住宅建築を支え、徐々に従業員も増えていき、地元の建具店としては大きな事業所となっていった。時が流れ、アルミサッシの普及に伴って木製建具の需要に陰りが見えてきた頃、弱電メーカーと提携してテレビ用のキャビネットの製造を開始。これが木製家具事業に進出する契機となった。現在では造作家具や学習机、公共施設向けの家具など、オーダーメイドに対応する生産体制を構築。加工機も大型のランニングソー、パネルソー、CNCマシニングセンター、NC加工機、縁貼り機などを複数導入し、2本の生産ラインで木製家具を製造している。

    工場見学ツアーに参加した東京建具協同組合の組合員は当日の朝に東京駅に集合し、新幹線で名古屋まで移動した後、在来線の特急で高山駅にて下車。昼食後、バスで高山バイパスを北上し、ナウエ㈱に到着。ツアー参加者は最初に名上泰幸社長から同社の生産ラインの特徴について解説を受けた。

    名上社長は「当社は昭和24年の創業。もともとは建具店として出発し、弱電メーカーのOEM生産によるテレビ用キャビネットの製造、その後に音響機器メーカーの造作家具、近年は病院や学校の家具やホテル、それから一般住宅向けの家具も製造しています。従業員は40名おり、収納家具や造作家具を1本から受注生産に対応しています。工場は品質マネージメントのISO9001と環境マネージメントのISO14001を取得し、品質と環境配慮の両面から評価を受けています」と、同社の沿革と特性を説明。更に平成26年からホマッグ社の3次元CADシステム「ウッドCAD・CAM」を稼働。「ウッドCAD・CAM」は従来のCADソフトのようにパソコン上で線を引いて図面を作成するのではなく、家具の設定条件を入力するだけで3次元の図面が出来上がる。キャビネットの棚板用のダボ穴間隔も自動生成し、図面確定後に加工機に伝えるデータも自動で作成する機能を持つ。加工データは大板の木取りも部材寸法から歩留まりの最適化を図り、残材を極力出さない。最新の家具設計ソフトと加工機を連動させることで受注生産の家具を短納期で出荷させている。

    工場見学は2班に分かれて実施。2本の生産ラインは1日で70台の家具を製造。基本的な工程は①木取り、②木口縁貼り、③穴あけ・ダボ打ち、④部品取り付け、⑤組み立て、⑥検査の順。家具用に加工した部材は裏面にバーコードを印字したシールを貼り、バーコードを読み込むことで加工機が作業内容を判断する。バーコードには溝加工、ダボ穴加工、縁貼りなどの情報が組み込まれているため、簡単な作業は機械だけで完結できる。6尺×9尺大板の加工もできる切断機もあり、資材選別から加工時間まで合理的に作業が進み、このことで価格対応力も生まれている。

 加工機で対応できない特殊な加工や塗装工程、あるいは扉の取り付けは工場内の技術者が担当。手加工となる部分は複雑なRの溝加工や楕円の穴あけ加工であるが、こうした部分の加工はハンディールーターなどを使う。担当する技術者は持ち場によってベテランもいれば、まだ年若い女性技術者である場合もある。社員の平均年齢は30歳台半ばであり、実際に若い技術者も多数働いている。単品製造のラインには4名のスタッフを配置。かつては20名体制を敷いていたが、工場内の機械化を進めたため、最小限の人員で対応できる。単品生産は病院や学校向けの特殊な形状の収納家具などが中心。基本的な加工は機械が行い、機械で賄えない部分は手加工としている。

    木材の廃材は工場敷地内のボイラーで焼却。ボイラーの熱源は工場の給湯や冬場の暖房、木材の乾燥に応用している。平成26年からは工場の屋根に太陽光発電システムを設置。現状では、消費電力と発電がほぼ同じ程度になっている。

    工場見学終了後の質疑応答では、営業エリアと配送体制、若手従業員を定着させるコツなどについて質問が出された。この問いに対し名上社長は「これまで九州から仙台まで納品した実績があり、現在は東京への納品が主要になっています。4トン車にはキャビネットで25台程度搭載できます。原則として製品は軒先渡しとなります」と、国内の広範囲なエリアをカバーできることを説明。若手従業員に関しては「今年の春に高校を卒業した従業員が4~5名いますが、まだ全員辞めていません。若い人材は地方の工業高校や工業大学に募集を告知し、そうした教育機関から紹介してもらうこともあります。当社では社員寮も完備しており、地方出身の従業員も安心して働ける環境を整えるように心掛けています」と、教育機関との信頼関係を築くことが若手従業員を入職させる近道であると説いた。また、福利厚生を充実し、働きやすい職場を作る努力も継続している。

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